2010年3月アーカイブ

「えなくりのたね」

ひとととおり栗のお菓子をご紹介して参りましたなかで、お菓子とはすこし風貌が違う「恵那栗のペースト」をご紹介します。

 

岐阜県東美濃「超特選恵那栗」のペースト

 美濃の国、恵那山の麓には、古くから街道がしかれ、宿場町でにぎわいました。そんな頃から「栗きんとん」をはじめとする数々の栗菓子が生まれ、いつしか恵那山の麓は、栗菓子の里として全国に知られていきました。

 

「えなくりのたね」に少量の砂糖を加えて炊き上げ絞った「栗きんとん」 今、その栗菓子の里では「名物の栗菓子は地元の栗で」という願いのもとで、霊峰恵那山の名をいただいた「えなくり」の栽培が盛んに行われています。

 恵那山の裾野の肥沃で健康な土に根を張り、太陽の光をその枝葉いっぱいに受けて育った恵那栗。その中でも、厳しい管理の下で特に愛情を込められて育った品質の高い栗が「超特選恵那栗」と名付けられました。超特選恵那栗「えなくり」は、長年の研究の中から開発された剪定・栽培方法「超低樹高栽培」で育てられ、「東美濃栗振興協議会  超特選栗部会」が設けた厳しい選定基準を満たした特別な栗だけに与えられる意匠です。「恵那山の麓を栗の里にしたい」という想いのもとで、品質、安全性、味、すべてにこだわって育てられています。

 栗は鮮度が命。早朝収穫した超特選恵那栗は、鮮度と風味が損なわれないよう、その日のうちに納入され、加工後ただちに話題のCas冷凍システムで急速冷凍されます。「えなくりのたね」は、その栗素材に少量の砂糖だけを加え炊き上げた栗のペーストです。お陰様で全国のお菓子職人。料理人に着目していただき、栗きんとんやモンブランペーストは勿論のこと、他の素材と組み合わせて、栗菓子として多様に活用していただいています。先日テレビ放映された中でご出演いただいた道場六三郎さんのおめがねにもかない、メニュー素材の一つとして愛用いただいています。とても名誉なことです。

 恵那川上屋では、恵那地方の食文化の伝承のため、そしてそれを担う農家の皆様のためにも、農家の方々が丹精込めて育てた「えなくり」を真心込めて加工した「えなくりのたね」を多くの皆さんにご紹介していきたいと思っています。

 

旬の栗を丁寧に炊いて瞬間冷却した「えなくり」のペースト(「えなくり」のおいしさが凝縮した「えなくりのたね」色んな可能性を秘めています) 

南天福寿きんとん餅

春の栗きんとんに合わせた「山芋の練り切り」、ほろほろと淡い食感はとても春らしいものですが、「練り切り」という生地の食感が、若い方や、昔ながらの上生菓子などをあまり好まない方にとって、ちょっと重いものであることを憂慮していました。そこで、練り切りよりもっと甘さが少なく、食感やのどごしがあっさりして、だれにでも好まれる春らしい生地を開発しよう、とこの商品が生まれました。

 春らしく親しみやすい生地として、数々の試作を経て完成したのが「羽二重生地」です。のびが良く、歯ごたえ、のどごしもやわらかく甘さも控えめで、「里長閑」より一層淡々とした仕上がりになりました。栗きんとんの風味も羽二重をワンクッションに、穏やかにふわっと鼻に抜けます。

 名前とかたちに映したのは、長く厳しい冬の大地から芽吹いた、緑葉と南天の実。難を転じて福となすという意味を込めて、合格祈願などの贈り物やなどにもご利用いただいています。立春を迎え、旧暦では新しい年が始まったこの季節、春栗きんとんに、この縁起良いお持ちを添えて、お世話になっている方へ春の便りを。

お餅の上の飾りが繊細なためとれないように気を配ります

(お餅の上の飾りが繊細なためとれないように気を配ります)

 

春栗きんとん 里長閑

「えなくり」の栗きんとんに、それぞれの季節のイメージや旬の素材を合わせて企画される四季の栗きんとん。春のきんとんには、地元恵那で収穫されたた特産品「じねんじょ」を素材にした練り切りを合わせ、霞立つ山里の長閑な風景を映しました。

「じねんじょ」とは自然薯と書き、県の「飛騨・美濃すぐれもの」にも認定されている珍しいやまいも。本来、栽培は不可能と言われていた自然薯が、栽培方法の研究開発の末、恵那の畑で栽培されています。ここ恵那で土づくりから栽培を始められ、数々の試行錯誤を経て栽培された「じねんじょ」は、太く素直に伸びて、すりおろしても真っ白。天然のものだと、土の香りは強いですが、すり下ろすと色が変色してしまい、淡いイメージとはほど遠くなってしまいます。

「練り切り」という生地は、白あんのつなぎには求肥をまぜるというのが一般的で、これは日持ち良く成型もしやすくなりますが、春の食感にはすこし重い印象です、そこでつなぎを芋に変えることでふんわり軽く、淡い口どけになります。長い間、地元の名産品である「じねんじょ」を加えて練り切りをつくりたいと考えていましたが、独特の強い土の香りと着色でなかなか春の雰囲気を表現できないでいました。そして待ちに待った、「すりおろしても白いままで風味もおだやかな「じねんじょ」。この薯をつなぎに使った練り切りは栗の風味を損なわず、やさしくほろほろとした食感で春の雰囲気を醸し出します。

 かたちに映したのは、恵那の花、天然記念物にも指定されているコブシの花。恵那川上屋の店頭に、一足先にこぶしの花が咲くと、山里にもようやく春の空気が漂います。

自然薯を使っているとは思えない柔らかい白い色

(自然薯をつなぎに使っているとは思えない柔らかい白い色)

栗きんとん開発のキーワードは「栗農家直伝の味」

恵那川上屋の栗きんとんは、栗の風味を最大限に引き出すため、つねに味や製法の研究が行われています。色々な栗きんとんを食べたりつくったりするなか、いちばん菓子職を唸らせたのは、誰がつくったものだと思いますか?それは、長年栗を栽培している専門家でもある、栗農家のおばあちゃんがこさえた手づくりの「栗きんとん」でした。

  私たち、栗をこよなく愛する工房のスタッフは、栗農家直伝のあの味をどうしても皆さんに味わっていただきたくて、農家の方々のアドバイスをいただきながら試作を重ね、ついに「栗農家に伝わる昔ながらの炊き方に限りなく近づける」ことができました。

 おばあちゃんの味がおいしいのには色んな秘密があります。まずは、なんといっても栗好きの人が調理していること。つぎに、手早く焦げができないように、かつ、まんべんなく火が通るように炊き上げること。一言でいうと簡単なようですが、手鍋一つでつくる家庭の量と、大釜で大量に炊く工房とでは規模が違います。いかにして家庭の製法を大釜で再現するかがポイントでした。

 そして「栗を愛する方々に少しでも美味しい栗きんとんを」という工房スタッフの熱い思いがついに実現。工房スタッフの心意気がこもったきんとんを、今では多くの皆様に納得して召し上がっていただいています。

まごころこめて仕上げられた栗きんとん

(まごころこめて仕上げられた栗きんとん)

「恵那栗」は私たちが育てた文化です

栗の事をもっと知りたい。優れた栽培方法を大切に伝えていきたい。栗を愛する仲間をもっと増やしたい。そんな思いから自社農園を稼働しています。

 東美濃の契約農家で生産される恵那栗は、各方面から注目されるようになり、全国各地の栗栽培に携わる方々から「東美濃栗振興部会」への問い合わせや視察依頼が殺到しています。土作りや自然栽培にこだわり、風土を生かした作物栽培をする真摯な姿勢が、全国に認められた結果です。

 私たち恵那川上屋のスタッフは、「恵那栗」はもはや単なる特産品ではなく、この地方の文化であることに気づき、この大切な文化をさらに研究し深めて、自分たちも多くを学び次世代に伝承していきたいと考えるようになりました。

 早速土地探しから始まり、農家の皆さんの協力を仰いで、自分たちの手で開墾、植樹が始まっています。

 

休耕地などを利用して植えられる苗木

(休耕地などを利用して植えられる栗の苗木)

 栗の手入れや収穫に手いっぱいの栗農家に代わって、栽培方法などの開発・研究・実験圃場を兼ねているのが自社農園です。具体的には栗の皮や枝を利用した堆肥作りや、農薬を使わない除草方法、恵那の風土に合った強い栗の品種作り、さらに農業経営の仕組み作りまでも取り組みます。

 目指すのは農家の皆さんが大切に育ててくださった栗を余す事なく利用できる循環型の農業です。毬や鬼皮、渋皮を土に還したり肥料にする計画、また染料や石けんにする研究もしています。

 恵那山の麓が日本一の栗の産地と認められる日はもうすぐそこ、とスタッフ一同じ願いのもとで、栗の達人となれるよう頑張っています。

同じ夢を分かち合って栗のスペシャリストをめざします

(同じ夢を分かち合って栗のスペシャリストをめざします)

 

恵那の栗だから自慢できること

栗の産地は日本全国にあり、それぞれその土地の環境にあった、個性ある栗が育てられています。今回は、産地で栗が収穫されてから、お菓子屋や八百屋に届くまでのおおまかな流れをご紹介します。

 農家で収穫された栗は、農家からで市場に持ち込まれると、各産地ごとに一つにまとめられ、選果作業に入ります。そして産地ごとにランク分けされた栗はそれぞれの地方に向けて出荷されます。

 栗の枝から市場出荷を経て、全国各地の卸市場に届くまで国内では約3〜5日が費やされます。栗は何より新鮮さが命。農家から工場までの距離が長いほど、その間に刻々と新鮮さが失われ、さらに虫の発生防止のための処理なども施されることになります。また、流通コストに加え、諸処の管理費が重なり、お菓子の値段にも影響します。

 恵那川上屋の契約農家は遠くても一時間以内の距離。朝採れた新鮮な果実を迅速に、そして農園ごとに直接納入して頂けます。農家と企業の連携は全国でも少ないとても恵まれた環境なのです。

 

早朝に収穫されて新鮮なうちに工房入りする恵那栗

(早朝に収穫されて新鮮なうちに工房入りする恵那栗)

つやつやの黄金色も、土の養分を吸った芳醇な香りも、きゅっとしまって歯ごたえのある食べ心地も、恵那地域の畑で出来た栗だから実現したことなのです。

 栗のランクには、その品質で「一般」「特選」に分けられますが、恵那川上屋の契約農家の栗はすべて特選を上回る「超特選」に格付けされています。恵那の畑は、気候、土壌、日照時間、標高、降水量など、栗の味が決まる大切な条件をすべて満たしているのです。

 その上さらに、他にはない強力な天然の肥料が施されています。それは「栗に対する熱い気持ち」。厳しい基準の品質管理基準のもとで一年中愛情という肥料で大切に育てられている栗は他にはないと自負しています。

 

厳しい栽培基準で大切に育てられています。

(厳しい基準で大切に育てられています)

 ここで前回の記事でも申し上げましたが、恵那山の麓で収穫される恵那栗の生産拡大を図ることが最大の目的ですが、お客様の要望に生産量がなかなか追いつかないのが現状です。全国各地の信用できる農家の方々に超特選恵那栗栽培の技術を供与し、恵那で収穫された栗に負けるとも劣らない栗を生産していただき、迅速に納入したもので足りない分を補っています。恵那の畑を拡大すると同時に、後々には産地の各所に加工所を設け、新鮮なうちに種に加工して納入する方法も検討しています。

 皆さんに少しでも安心、安全、おいしい栗を愛でていただけるよう、たゆまぬ努力をしています。これからも温かく応援よろしくお願いします。

栗の品質基準を確認する「目揃え会」

超特選栗部会では、それぞれの農家から出荷する栗の品質を統一するために、早生「丹沢」の収穫が始まる毎年9月上旬、選果も講習会を行います。これには恵那・中津川地域の、超特選栗部会のみなさんが出席します。

 「目揃え」とは、その年の栗を持ち寄って、育ち具合や病害虫の被害状況などを確認し、それぞれの農家や地域で、品質にばらつきがないように、基準を揃えることをいいます。

 その後も、収穫期間中は毎日、それぞれの地区で各農家からの出荷物を持ち寄って、厳密なチェックが行われます。

  こんな風に栽培農家の方々の努力や向上心があってはじめて、超特選恵那栗のその優れた品質と美味しさが保たれています。

栗栽培農家同士の貴重な交流の場でもあります。

(栗栽培農家同士の貴重な交流の場でもあります)

栗の枝の剪定士制度

超特選恵那栗の栽培基準に、超低樹高栽培という特殊な剪定方法を用いた栗の生育法があります。これは中津川市在住の栗博士、塚本實さんが研究・開発した特殊な剪定方法を行うことで、栽培の平易、収量の増加、悪天候などに左右されにくい収穫量が期待されるものです。

 この剪定に携われるのは、規定の講習を終了した、恵那・中津川で現在95名居る「剪定士」の方々だけです。剪定士として認定されると、自宅農園の作物の品質向上だけでなく、JA等の機関からの依頼により、31組程度のグループで有料の剪定作業に赴くこともあります。組を作るのは、作業の能率化と、相談による確実な剪定方法の見極めなどが目的です。

 剪定の講習会は、各地域で年1回行われるほかに、新人研修会なども催され、技術の向上に積極的な方は、毎回各所に参加されます。

 

真剣な眼差しで講習を受けられる皆さん

 (真剣な眼差しで講習を受けられる皆さん)

 講習会の会場には。高齢化で剪定が困難な農家などが選ばれ、講習を兼ながら、剪定のお手伝いを兼ねたり、跡継ぎや2代目の方に積極的に参加していような農家を選んだり、工夫がされています。

 

夏期剪定は暑い中たいへんな作業

(夏期剪定中は暑い中たいへんな作業)

 今後は、試験制度なども厳密にし、一層の品質向上が期待されています。